永遠のかけら
 




長雨が続き、気候のせいか雪に変わったどんよりとした空。
雪の大好きなルフィが満足するほどは積もらずに終わってしまったが、
明日は久々に太陽が拝めそうだというナミの言葉。
見張りだったゾロの元をルフィが訪れたのは深夜になってからだった。
「初日の出か?」
「アタリ。寝ちゃってもここなら昇ってくるの分かるもんな」
そうは言うものの、冷え込みなど気にしないルフィは防寒具を一つも持っていない。
仕方なく、最初は二人で毛布に包まっていた。
この体制から起き出すのも、下に戻るのも面倒だとゾロが考えていると
少しの沈黙の間にルフィは眠ってしまった。
抜け出そうとするゾロを捕まえるかのように、しっかりとゾロの服を掴んだままで。
見張りで起きている自分よりも、眠って無防備になるルフィを優先すべきだと
ゾロは自分にもかかっていた分でルフィを包みこみ、
その体ごと、しっかりと自分の胸に凭れかけさせた。
肩に押しあてられた口からは、深くゆっくりとした呼吸がゾロをくすぐる。
ずり落ちる毛布を、何度もルフィの顔が埋まるほどまで引き上げては
すり寄ってくる体に回した手で背を軽く叩いて宥める。

安心しきったその表情と、全身で凭れかかられる重みは
何ものにも代えられない幸福感をもたらす。

誰にでも、無意識的に信頼を預けられるように見えるルフィ。
誰かに寄り添って眠ることもあるが、それでもこんなにもしっかりと掴まれ、
離すな、離れるなと言いながらも、安心しきった顔を見せるのは
誰でもない、ゾロだけだと知った。
体の奥からは、今までに感じたこともないほどに
あたたかな感情が沸き上がってくる。
抱き締めて、この腕から逃したくないとまで思ってしまう自身には
思わず苦笑してしまうけれど。




白み始めた空は、もう直日が昇ることを示している。
この時間になれば、朝食準備のサンジや朝の早いロビンあたりが起き出してくる。
もう見張りも必要ないかと、そう思えばゾロにもだんだんと眠気がやってくる。
ルフィが見たいと言っていた日の出の時は近い。
起こしてやるべきだと、そう思いながらも幾度もルフィに誘われた眠りの渕が
引き込む力の方が大きかった。







体に感じた大気に身を震わせ、ルフィは顔を上げ、うっすらと目を開けた。
寒さを感じたのもほんの一瞬。
体が少しでも動けば、閉じ込めている腕がぎゅっと強さを増すから。

目の前には、今まで凭れていた白いシャツの肩。
目線を辿れば、自分の肩に頭を預けている緑の髪。
いつもと違うのは、もたれ掛かっているその肩が、剥き出しではなくて毛布に包まれていること。
どうりで外にいるのに寒さを感じないわけだ、とルフィが納得するのも束の間。
よくよく見れば、毛布に包まっているのは自分だけで、ゾロの腕が見えた。
ゾロは、毛布にルフィだけを包みこんで、そのルフィを囲っていた。
ゾロが起きても構わないと、ルフィは身じろぎして毛布の端を掴んで広げる。
が、ゾロは目も開けずに、ただ眉をしかめて広げられたルフィの腕ごとまた閉じ込めてしまう。
「もー‥ゾロ‥‥」
力づくでなら、負けない自信はあるルフィだから、もう一度と腕を広げようとするが
気配を察したゾロが、今度は立てていた膝をも使って抱き込み、ルフィは雁字搦めにされてしまう。
「ゾロが寒いだろうが〜‥」
実際、ひゅうっと風が抜ければ寒さを感じるには違いないらしく、
腕の中の温もりをさらに強く抱き締める。
すっかり抱き枕状態のルフィが困ったと声をあげても、捕まえたと言わんばかりのゾロは
心地よさそうに寝息をくり返すだけ。

いつもいつも
笑っているときでさえも崩れないのだろうかと思わされる眉でさえ下がって見える。
ゾロが、安心して眠っている。
出会った頃からずっと、ゾロは眠ることが多かったが、そのときからずっとこんな感じ。
ルフィに見せる表情は、いつだって柔らかくて優しくて。
気持ちが通じ合う前には少し変化してしまった、そのことがとても寂しくて。
互いに認めあえば、そこからは前よりももっと、ゾロが自分を預けてくれるようになった。
そんなゾロを見つめているときは、自分もあたたかで優しい気持ちになっている。
どこまでも、際限なく溢れてくる気持ち。



「ゾロ」
「‥‥ん‥」
「ゾーロ」
「‥‥‥」
意識はだいぶ覚醒してきているようだが、夜通し起きていたせいもあり
なかなか目を開く事はできずにいる。
少し弛んだ腕に、ルフィは隙をみて毛布を掴んだ腕を伸ばし、
伸び上がった体で僅かながらも、ゾロの肩を毛布で包み込んだ。
「なぁゾロ、もーすぐ日が昇るぞ」
膝立ちになったら、見張り台の縁で見えなかった水平線が飛び込んできた。
空には、未だ雨雲も残っていたが、久々の太陽による強烈な光りが
その存在さえもかすめてしまう。
「後ろ向いてても眩しいな‥‥」
「そっか」
「あんまし直接見ると、目悪くなるぞ」
「ん〜‥」
そう言われて、ルフィはふにゃりと座り込み、またもゾロの腕の中。
見上げれば、背中から受けた朝日が、ゾロの緑色の髪を明るく鮮やかに見せる。
しかし、その明るさとは逆に、まだまだ寝足りないゾロの目蓋は重く、
表情もまだまだぼんやりとしている。
ルフィは今度こそ毛布をゾロの背中からかぶせると、その端をゾロに持たせ、
ぐいっとゾロの頭を自分の肩へ、さっきと同じような位置に引き寄せた。
「残りの時間は、おれが見てるから、ゾロ寝ろ寝ろ」
「あぁ‥頼んだ」
くったりとルフィに凭れて、やんわりルフィの背中に腕を回して安定位置。
「ルフィ‥」
「んん?」
「今年も、よろしくな」
「うん、今年もだーいすきだぞ、ゾロ」
「当たり前のこと言うな」
「当たり前だから言うんだ」
「そう‥か。おれも好き‥だ、ルフィ‥‥」
半分夢の中で、もう既に意識は沈んでしまったゾロの言葉に
ルフィはただただ嬉しそうに笑って、毛布の中からゾロの背中に手を回した。





あけましておめでとうございます。
いつもながら、突発的で未熟な文ではありますが
日頃お世話になっている皆様への御挨拶とさせていただきます。
煮るなり焼くなり捨てるなり、お好きにしてやってください。
こんな私ですが、どうぞ今年もよろしくお願いします。

2005ねん1がつ    らみる


05年の初め、らみる様から いの一番にいただきましたvv
なんとも可愛らしく、ラブラブな二人でございますvv
ありがとうございますvv
大切にさせていただきますね?

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